【国内で14年ぶりに狂犬病の患者が確認された】
愛知県豊橋市は今年2月にフィリピンから来日した人が市内の医療機関を受診し、狂犬病と確認されたことを発表しました。
日本国内で狂犬病の患者が確認されたのは14年ぶりです。
豊橋市は年齢や性別、国籍などは公表していません。
ですが、「来日」した人のようなので、日本国籍ではない、つまり日本に定住している人ではないかもしれません?
この患者は5月11日足首に痛みがあり、その後、腹痛やおう吐などの症状が出たため、18日に市内の医療機関を受診し、集中治療室に入院しました。
なぜ狂犬病とわかったか? というと、
患者の検体を国立感染症研究所に送って検査したところ、22日狂犬病の感染が確認されたということです。
この患者の家族の話では、去年9月ごろにフィリピンで犬に足首を咬まれたと言っています。
私見ですが、新型コロナウイルス感染症で大騒動のこの時期だからこそ、検体の検査などをしっかり行ったのかもしれませんね。
狂犬病という怖い病気は、日本においてはほぼ根絶しています。
ですが、過去には日本においても1950年代までは狂犬病に感染した犬が存在していました。
それが1950年に「狂犬病予防法」が施行されたために、国内の犬による狂犬病の発生がなくなりました。

ただ、犬ではなく人の事例がいくつかあります。
1970年にネパールで感染した1例。
2006年にフィリピンで別々に感染した2例。
などがあります。
いや~驚きましたね!
まさか狂犬病の発症事例が日本で出るなんて!
【狂犬病とは?】
《狂犬病とは?》
狂犬病は新型コロナウイルス感染症と同じでウイルス感染する病気です。
ウイルスに感染した犬や猫などにかまれることで感染します。
ですが、人から人へ感染することはありません。
つまり、狂犬病ウイルスを持つ動物に咬まれた人だけ発症する感染症ということです。
また、狂犬病にかかった哺乳動物に咬まれた部位から唾液に含まれる狂犬病ウイルスが侵入することで感染します。
つまり、狂犬病は犬だけではなく、他の哺乳動物に咬まれた場合にもありうるということです。(狂犬病ウイルスを持っている動物ということ)
哺乳動物の中でも症例の90%以上は犬に咬まれたことが原因です。
また感染してもすぐにワクチンを接種すれば発症を防ぐことができますが、ワクチン接種をしないと多くは1ヶ月~3ヶ月、長い場合は1年以上たってから発症することがあります。
ここがやっかいですね。
旅行などで海外に行き、そこで犬などにかまれたとしても、時間がたってしまうとすっかり忘れていることもありますから。
ただ、医療機関で受診すれば、海外渡航を訊かれると思います。
《狂犬病の怖いところ》
新型コロナウイルスは怖いが、狂犬病に対して恐怖感を持っている日本人は今現在ほとんどいないでしょう。
それは狂犬病の予防接種が義務化され、国内で発症する(国内の原因で)ことがないからです。
ですが、犬や猫を飼っている人はある程度の知識を持っていることは必要であると思います。
狂犬病の怖いところは、「発症すると有効な治療法がなく、ほぼ100%死亡する」
ということです。
狂犬病は致死率100%と言われている感染症なのです。
致死率100%って、ありえねー!
怖い!
でも、今回のような海外で動物にかまれるなどがない限り、国内で狂犬病に罹患することはほぼないと思います。
そう考えると安心。
《狂犬病の症状》
発症するとどうなるのか?
狂犬病が発症すると、強い不安感や一時的な錯乱などの精神症状や痙攣や麻痺などの神経症状が出ます。
もう少し詳しく述べると、
全身の脱力感や不快感、発熱、頭痛などのインフルエンザの症状と非常によく似た症状で始まります。
これって、新型コロナウイルスとも似ていますね。
咬まれた部位の違和感を感じ、チクチク感、かゆみを伴うことがあります。
その後、急性神経症状期として不安、混乱、焦燥感などの脳炎の症状が見られるようになり、進行すると異常行動、幻覚、水を怖がる恐水症状や風を怖がる恐風症状などの症状が現れます。
お~こわっ!
注意する必要があるのは潜伏期間です。
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザと違って、潜伏期間が非常に長いのが狂犬病の特徴です。
潜伏期は、1ヶ月~3ヶ月とされています。
最長で8年後に発症した事例も報告されています。
今回確認されたフィリピンからの来日者も犬に咬まれてから約8ヶ月経過しての発症です。
《狂犬病はどこで感染する?》
日本においては狂犬病の予防接種が行われているため、国内の犬による狂犬病発症はほぼないと考えられます。
ではどこで感染するのか?
実は、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、スウェーデンなどのごく限られた国を除いてほぼ全ての国で流行しています。
WHOの発表によれば、年間59000人が狂犬病によって亡くなっていると試算しています。
しかもその6割はアジア地域で起こっています。
アジアでも特にインドで感染者が多く報告されています。
《狂犬病の治療法は?》
狂犬病に対する治療薬はなく、症状に応じた対症療法・支持療法が行われます。
つまり、実質的に狂犬病ウイルスを撃退することは出来ない、ということです。
狂犬病にかかってしまったら、ほぼ治療はできずに命を失う、ということを意味しています。
ある意味では、新型コロナウイルス感染症よりも怖いのでは?
ただ、若干ですが、これまでに狂犬病の生存例が20例に満たないほどあるようです。
ですが、年間約6万人もの命を奪っているとすると、20例というのは無きがごとき数、奇跡的な生存と言えるかもしれません。
《狂犬病の対策は?》
日本国内においては狂犬病予防法により、狂犬病予防接種が義務化されているので、犬を飼っている人がきちんと予防接種をしていれば、国内で狂犬病が発症することはありません。
ですが、ですが・・・!
なかには、狂犬病予防をしない飼い主さんがいると聞きました。
ほんのごくわずかな人であるとは思いますが、犬を飼うなら絶対に狂犬病予防のワクチン接種は行うべきです。
なぜなら狂犬病は致死率100%ですから、予防接種しないということは、誰かを確実に殺してしまう可能性を完全に否定できないからです。
(ただし、それはものすごく低い確率ですが・・・)
狂犬病の予防接種は、生後90日を過ぎると狂犬病ワクチンを打つことが義務化されています。
犬を飼っている人は必ず行いましょう。
【新型コロナウイルス感染症による自粛の影響】
通常であれば、この時期に狂犬病ワクチン接種をほとんどの人が行っていると思われますが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で少し心配があります。
それは外出自粛の影響で、ついつい狂犬病の予防注射をしていない飼い主さんがいることです。
外出自粛中は後で行おうと思っていたのに、自粛が解除されたことで、すっかり予防接種を受けることを忘れてしまう人がいるようです。
致死率100%の狂犬病の発症を防ぐ唯一の手段が予防接種です。
忘れずに予防接種を行いましょう。

【犬を飼うすべての人へ】
この記事を書いている途中で思い出したのですが、ずいぶん前に私も犬に咬まれたことがありました。
それはたぶん・・・、20年くらい前でしょうか?
それくらい時間が経っているから狂犬病にかからなかった、ってことかな?(笑)
(一応そのとき病院に行きました)
新型コロナウイルスがいま世界を席捲しているように、ウイルスには国境はありません。
現代社会は貿易、交通、流通などが世界中に広がり、つながる社会です。
狂犬病ウイルスが密輸や何らかの事故等によって日本に侵入する可能性は完全に否定できません。
世界中には多くの感染症が存在します。
エボラ出血熱、ノロウイルス感染症、風疹、デング熱、腸チフス、マラリア、インフルエンザ、また過去にもスペイン風邪、アジア風邪など。
この中で人類が克服できた感染症は天然痘だけなのです。
つまり、人類は発生したウイルス感染症を抑えることはできたが、克服することは出来ていない、ということです。
現代医学をもってしても解決できないのが感染症なのです。
ここに現代科学の限界があります。
ですが、きちんと毎年狂犬病の予防注射をすることで日本国内では狂犬病を防ぐことはできます。
また、狂犬病の多くがアジア地域で主に犬に咬まれたことから発生しています。
アジア地域に旅行などする場合は、犬に限らず動物に咬まれないよう注意をする必要があります。
狂犬病ウイルスを保有しているのは犬に限りません。
そして、どの動物、どの個体が狂犬病ウイルスを保有しているか見た目ではまったくわかりません。
とにかく咬まれないようにするしかありません。
最後に、狂犬病ウイルスは人から人へ感染しません。
ですが、感染した人の唾液にはウイルスが含まれているので、濃厚接触した人は速やかにワクチン接種をすることが重要です。
外国では、日本のような清潔な国柄ではなく不衛生な社会を形成していたり、狂犬病ウイルスの予防接種を完全に行っていない国があります。
海外への渡航の際は気をつけなければなりません。
また、こうした知識を知っていることはとても大切です。
友人が自然動物と接触する可能性がある渡航をするなら「狂犬病に注意してね」「動物に咬まれないように注意してね」などと注意を促すことも大切ではないかと思います。
日本の事例からすると、フィリピンは要注意です。
(フィリピンを悪者にするつもりはありませんが・・・)
またインドなどアジア地域への渡航は気をつける必要があります。
「愛するとは理解することである」
という言葉があります。
犬を愛することは「犬に関することを知ること(理解)」だとも言えます。
だって、好きな人ができたらその人のことをいろいろ知りたいと思うでしょう?
狂犬病に関することを知ることは、愛犬を愛することに繋がると私は思います。
お読みいただきありがとうございました。