
ペットロスで苦しむ家族や友人を支えるためには「ペットロス」を知る必要があります。
それがペットロスで落ち込む人を救う力となります。
【ペットロス症候群とは】
「ペットロス」とは、ペットを失うことで心身(精神的・身体的)に症状が起こること。
または、家族同然と思って愛情をそそいできたペットと共に過ごしてきた生活が、ペットの死や行方不明などによって突然引き裂かれることで起こる精神的または身体的な症状が起きることです。
「心の防波堤」として、飼い主の愛情に応えて「癒し」や「安らぎ」を与えてくれていたペットとの別れによって、愛情の行き先を失い、「癒し」や「安らぎ」を得られなくなることで精神的にショックを受けること。
ペットを失った飼い主は、鬱(うつ)状態になって気分が落ち込みます。
症状が重くなると精神疾患や身体的な病気を引き起こします。
ペットを飼っている人にとっては避けて通れないことですが、「ペットロス」を軽く考えてはいけません。
【ペットロスの心理状況と症状】
ペットを失うと飼い主は悲しみ、怒り、罪悪感、否認、抑うつといった感情を抱えて苦しむことになります。
中でも「否認」「怒り」「罪悪感」「抑うつ」の4つの感情は、ペットの死に伴う感情の混乱状態の中で、ペットを失ったことを認めたり理解したりすることが特に困難な感情とされ、そのために克服することが困難な感情であるとされています。
『モイラ・アンダーソン著「ペットロスの心理学」より引用』
『否認』
精神的な苦痛から現実逃避をするために事実を否定しようとする状態。
『怒り』
死因となった原因や状況、致命的な事故、傷害を起こした人物、獣医師などに怒りの感情をぶつけることで一時的な気晴らしをもたらす。
または飼い主としての責任を重く受け止め、自らに怒りをぶつける。
『罪悪感』
怒りの感情はやがて自らの内面へ向きを変え、自責の念となって罪悪感を生み出します。
特に安楽死を決断しなければならない場合や、死因が判明しなかった場合、または飼い主として十分な世話や注意をしなかったという後悔の気持ちがある場合に、自らを責める気持ちが強くなり罪悪感に苦しみます。
これは真面目な性格の人、責任感が強い人であればあるほど罪悪感も強まります。
『抑うつ』
なにより、ペットを失った喪失感は抑うつを引き起こします。
「元気がでない」といった軽い段階から、「感情がマヒ状態」と重い症状になり、最悪は「生きる気力がわかない」となります。
こうした感情はひとによって違いがありますが、数日で終ることもあれば、数週間、数ヶ月以上続いてしまうこともよくあります。
一般的に精神的な病と身体の間には深い関係があるため、身体的な病気に発展してしまう場合があります。
精神的に落ち込むというだけではすまなくなるケースも多いのです
例えば、
歌手のジュディ・オングさんは愛犬の死によって幻覚や時間感覚の喪失といった精神的な症状や血圧の上昇、コレステロール数値の悪化といった身体的な悪化に影響があったと言われています。
結局は、愛情の対象であるペットを喪失することで感情(精神的)が「悲しみ」「寂しさ」「せつなさ」「心細さ」「孤独感」「後悔」で包まれてしまい、生きるための力を失ってしまうということです。
【ペットロスが重症化してしまう要因】
近年では核家族化・少子化・高齢者の独り暮らしなどの社会的要因もペットロスに影響を与えています。
例えば、独り暮らしの高齢者などは「わが子同然」としてペットを心のよりどころとして暮らしています。
ペットに話しかけ、共に楽しい時間を過ごしています。
そこにペットの死に直面すると、その飼い主は喪失感や悲しみだけでなく「孤独」という現実を突きつけられます。
それと、ペットを「愛玩動物」というよりも「伴侶動物」と捉える飼い主が増えています。
つまり、ペットを「本当の家族」と思っている方が圧倒的に多いのです。
ですから、単なる「ペット」といいうよりも「大切な家族」を失ったと感じてしまい、それによってペットを失った精神的ショックが増しているのです。
さらに現代はストレス社会です。
家族間のトラブル、職場でのストレスなど様々なストレスから避けられない社会となっています。
ペットロスの悲しみに他のストレスや葛藤などがあれば、ペットロスの苦しみも2倍、3倍へと跳ね上がってしまします。
そして、一番ペットロスの飼い主の心を傷つけるのが、家族や周りの人たちの「無理解」です。
ペットへの愛情がどれほどのものなのかは、ペットを本当に可愛がった人にしか分かりません。
家族や周囲の人たちがペットを可愛がる人の気持ち(ペットロスの気持ち)を理解できずにいると、本来精神的な支援を受けられるはずの家族や友人から慰められたり支えられることがなくなります。
同時にそれはペットを可愛がる飼い主(ペットロスの飼い主)の気持ちを逆に傷つけてしまうことになります。
さらに家族が無理解だとペットロスに陥っている飼い主は悲しみを我慢してしまいます。
我慢することで心の傷の治りが遅れます。
また、ペットロスで傷ついているところにさらに悲しい言葉や態度を投げかけられると、それはトラウマとして長く残ってしまうこともあります。
こうした要因が重なると、ペットロスは重症化してしまいます。
【ペットロスを克服する人と長引く人の特徴】
〈ペットロスを克服する人の特徴〉
ペットロスを早期に克服する人の多くに見られる特徴は「ひたすら泣く」ということです。
つまり、我慢せずに泣くことが立ち直るためには大切だということです。
また早期にペットロスを克服している人に共通しているのは「新しいペットを迎い入れる」ということです。
(ただしこれは注意が必要です)
〈ペットロスが長引く人の特徴〉
反対にペットロスが長引く人の多くは「ペットロスに関して周りに話せなかった」という傾向が見られます。
人間の心理は、ペットロスに限らず誰かに話すことで気分が回復するようになります。
ペットロスの悲しみや失くしたペットの思い出を話す相手がいないと悲しみはそのまま残ってしまいます。
聞いてくれる相手がいないということは、ペットロスを長引かせてしまう要因なのです。
さらに、ペットの生前の世話に対して、あるいは死にいたる時の状況において飼い主として「後悔」の気持ちが強いと、なかなか立ち直ることが難しくなります。
【男性のペットロス】
男性の場合は女性と違う特徴があります。
それは家族の前では恥ずかしいから悲しみを表現できないという男性が多いのです。
男性は女性と違って感情を表に出すことが苦手なのです。
また、ペットロスの精神的苦痛に目を向けざるを得ないときに「怒り」の感情が湧き上がるという特徴が見られます。
これは、他の家族が悲しんでいるときに、自分が感情をコントロールしなくてはいけないという男性特有の責任感から「怒り」の感情が情けない自分に対して湧いているのです。
家族が悲しんでいるのを怒っているわけではなく、自分自身に対して怒りの感情が湧いてきているのです。
男性という生き物は「プライドの生き物」と言われています。
ましてや、年配の方であれば人前で涙なんか見せなれないと思っている方が多いのです。
【子供のペットロス】
子供のペットロスには大人と違った意味合いがあります。
(その子供の年齢にもよります)
ある意味では大人以上に心を痛めることもあります。
社会経験がなく、人生の意味もまだ分かっていない子供には「ペットの死」ということをどう受け止めるのか、というこがとても大事です。
子供の場合、自分の兄弟同然として毎日暮らしていたり、自分が飼い犬(または飼い猫)の親代わりと思って世話をしているので、大人と同様に精神的なショックを受けます。
ペットを失くした子供に対して親が気を付けることは、すぐに新しいペットを買い与えないことです。
まずは失くしたペットとの思い出(遺品を含め)を整理し、自然と新しいペットを求めるようになるまで待つことです。
心の整理がついていないと子供の心の中で亡くなったペットと新しいペットが重なりあって混乱、比較、葛藤などを引き起こしてしまいます。
また、亡くなったペットを忘れようとすることへの後ろめたさを感じてしまいます。
まずは亡くなったペットへの供養をし、思い出を大切にすることをすすめましょう。
続けて「ペットロスの家族への対処法」をご覧ください。
お読みいただきありがとうございました。
