
猫のガンを知ろう!(リンパ腫)
【猫がかかりやすいガン】
猫の2大疾病の1つが「ガン」です。
猫の病気で腎臓病などの泌尿器系の次に多い病気が「ガン」です。
その「ガン」の中でも今回は「リンパ腫」について話していきます。
まずは「猫の2大疾病に注意」をご覧ください。
【猫のリンパ腫】
リンパ腫とは、リンパ球が腫瘍化することによって起こる「ガン」です。
リンパ球とは、免疫細胞でウイルスなどから体を守るために全身を巡っています。
高齢の猫に発生することが多いですが、猫白血病ウイルスに感染していると若年齢でも発症します。
猫白血病ウイルスに感染している場合は、1~3歳で発症し、感染していない場合は8~11歳の年齢で多く発症します。
〈特徴〉
リンパ球はもともと全身に分布しており、リンパ腫も全身の様々なところ(肝臓・腸・皮膚・腎臓・胸など)に発生します。
進行すると、肝臓や脾臓、骨髄内に入り込んでしまい、臓器の機能を低下させてしまいます。
消化器型、鼻腔内型、縦隔型、多中心型などの型があります。
獣医師の間では、「猫の内科系疾患の王」と呼ばれています。
リンパ腫のなかでもっとも多いのが、消化器型のリンパ腫です。
消化器型のリンパ腫の場合、ガン細胞の形によって大細胞性と小細胞性に分けられます。
消化管やその周りのリンパ節にできることが多く、発症年齢の中央値は10歳です。
〈症状〉
症状としては、
体重減少、嘔吐、下痢(消化器型)
中高齢の猫の片側から出る鼻血や鼻水(鼻腔内型)
他には、食欲不振、呼吸困難、脚の麻痺などの様々な症状があります。
年を取るとよくある不調のため、飼い主は加齢によるものなのだと思いこみ、発見が遅れることが多いので注意が必要です。
消化器型(腸にできる)・・・症状は嘔吐、下痢(割合43%)
鼻腔内型(鼻の中にできる)・・・症状は鼻づまり、鼻血、呼吸困難(割合6.3%)
縦隔型(胸の中にできる)・・・症状は呼吸困難、食べ物が飲みづらい(割合5.7%)
皮膚型(皮膚にできる)・・・症状は皮膚炎のような症状(割合5%以下)
特に消化器型は進行してから発覚することが多いガンのひとつです。
大細胞性リンパ腫は、消化管の一部が団子状に肥大してしまいます。
小細胞性リンパ腫は、消化管が均一に肥大します。
中高齢の猫で鼻の片側から急な鼻血が出るようなら、鼻腔内型リンパ腫の可能性があります。
〈検査・診断〉
リンパ腫の診断は細胞の検査(針吸引検査)でわかります。
さらに病変がどこまで広がっているかを調べるために肝臓、脾臓などの針吸検査や骨髄検査を行います。
その他の検査としては以下があります。
血液検査、血液凝固系検査、レントゲン検査(胸腹部)、超音波検査(心臓・腹部)、尿検査(腎臓の状態を調べる)。
重症度はステージで分類することができます。
ステージ1・・・1個のリンパ節または単一の腫瘍に限られる。
ステージ2・・・複数のリンパ節または腫瘍の病変、または切除可能な消化管腫瘍。
ステージ3・・・全身のリンパ節に波及している、または広範囲の切除不能な消化管腫瘍。
ステージ4・・・肝臓、脾臓に浸潤している。
ステージ5・・・中枢神経、骨髄に浸潤している。
〈治療〉
リンパ腫は全身性の病気であり、抗がん剤で治療します。
抗がん剤に非常によく反応してくれることが分っており、約60%の症例で効果が出ています。
治療を行った場合の平均余命は6~9ヶ月程度で、1年を越せる確率は20%程度と言われています。
さらに猫白血病ウイルスに感染していると治療効果、余命が短いことが分っています。
無治療の場合は、平均余命は1~2ヶ月とされています。
ただし、抗がん剤治療には副作用があり、胃腸障害(嘔吐・下痢)、骨髄抑制(免疫力の低下)、脱毛などが現れます。(個体差にもよる)
〈予防〉
飼い主が気づける症状は、体重減少を伴う嘔吐や下痢です。
猫はよく吐きますが、体重が保たれていれば問題はありません。
体重が減少していく場合は要注意です。
猫にとっての1㎏は人間の数倍の意味を持ちます。
体重管理には、人間用の体重計ではなく、10グラム単位で量れるベビースケールが適してします。
〈飼い主ができること〉
飼い主ができることがあります。
それは「禁煙」です。
家庭内に喫煙者がいる場合、リンパ腫の発症リスクは2.4倍になります。
猫は頻繁に毛づくろいをしますから、副流煙で体毛についた発がん物質を毛づくろいで体内に取り込んでしまいます。
猫の前で喫煙しないように注意しましょう。
また、可能であれば禁煙をおススメします。
なぜならタバコの発がん性物質は家具や壁、飼い主の衣服などについていますから、直接煙を吸い込んでいなくても発がん性物質を体内に取り込んでしまう可能性があるからです。
リンパ腫は猫にとってとても怖い病気です。
しかし、リンパ腫の特徴である、発症する箇所が様々なところに現れ、その症状も様ざまなため飼い主が気づきにくい病気でもあります。
リンパ腫の種類や年齢などで現れる症状が違っているので、なかなか素人には見分けられません。
ですから、よく注意して飼い猫を観察する必要があります。
特に体重減少をともなう食欲不振、嘔吐、下痢には注意しましょう。
少しでも食欲不振や下痢などの症状が続いたら念のために受診することが大切なペットを守ることになります。
受診して検査の結果なんでもないと分かれば安心できます。
めんどくさがらずに受診しましょう。
合わせて『猫のガンを知る(肥満細胞腫)』をご覧ください。
お読みいただきありがとうございました。
