
猫のガンを知ろう!(肥満細胞腫)
【猫が掛かりやすいガン】
猫の2大疾病の1つが「ガン」です。
猫の病気で腎臓病などの泌尿器系の次に多い病気が「ガン」です。
その「ガン」の中でも今回は「肥満細胞腫」について話していきます。
まずは「猫の2大疾病に注意」をご覧ください。
【猫の肥満細胞腫】
肥満細胞腫とは、皮膚や粘膜など全身の組織に広く分泌している細胞が腫瘍化した「ガン」です。
肥満細胞腫という名前から誤解されがちですが、肥満した猫にできるわけではありません。
名前の由来は、ガン細胞に含まれる顆粒で細胞が肥大していることによります。
〈特徴〉
猫の肥満細胞腫は、猫の皮膚や皮下にできる疾患の中でも最も多く、約25%以上をしめています。
頭頸部や体幹、四肢によくできる傾向があります。
「皮膚型肥満細胞腫」
皮膚の表面に腫瘍が発生します。
皮膚型は「肥満細胞型」と「異形型」に分類されます。
「内臓型肥満細胞腫」
全体的に悪性度が高い腫瘍です。
内臓型は「脾臓型」と「消化器型」があります。
品種では、「シャム」に多いと言われています。
〈症状〉
体表にできものが現れる皮膚型と内臓に腫瘍ができる内臓型があります。
「皮膚型肥満細胞腫」
首や体幹にも発生しますが、頭部、特に耳や耳の根元によく発生します。
1つだけのこともあれば、全身の皮膚に多発することもあります。
皮膚型の初期症状としては、体表の小さなできものです。
白色やピンク色をしていて、硬くわずか数ミリの小さなサイズで発症することが多い。
猫にとっては無症状ですが、かゆみを伴うことがあり、患部をしきりに舐めたりひっかいたりして、潰瘍化してしまうこともあります。
放置しておくと、まれに内臓型に発展するリスクがあります。
皮膚型の発症年齢は9歳ごろ。
「内臓型肥満細胞腫」
元気がなくなる、体重減少、食欲不振、嘔吐、血便などの消化器症状が見られます。
また、腫瘍は広範囲へ広がり貧血や胸水などを引き起こすことがあります。
内臓型の肥満細胞腫は、特に脾臓に多く発生しますが、見つけることが困難です。
症状からは判別しかねることが多いガンです。
内臓型は早期発見、治療ともに難しいのです。
内臓型の発症年齢は14歳ごろ。
〈検査・診断〉
針生検査で診断できます。
体にできた腫瘍に細い針を刺して細胞を採取して顕微鏡で見て診断します。
または、超音波検査で診断します。
〈治療〉
皮膚型、内臓型ともに、治療の基本は腫瘍を切除する外科手術です。
「皮膚型肥満細胞腫」
腫瘍部位のみならず出来るだけ広い範囲を切り取る必要があります。
周りの皮膚ごと切除することで再発率を減らすことができます。
皮膚型の肥満細胞腫は多発することが多く厄介ですが、外科手術を行えば良好な予後を期待できます。
しかし、完全に取り除けたとしても再発する可能性はゼロではありません。
腫瘍が再び発生する確率は0~24%、ガンが全身に転移してしまう可能性は0~22%です。
再発が起こるとしたら6ヶ月以内に再発するといわれています。
「内臓型肥満細胞腫」
内臓型の肥満細胞腫、特に脾臓にできた場合は、脾臓を摘出する手術を行います。
脾臓の摘出手術による生存期間は12~19ヶ月と格段に伸びるという良好な結果もあります。
この場合、脾臓は摘出しても日常生活に大きな不便は発生しません。
一方、消化器型肥満細胞腫は転移していることが多く、摘出手術をしても予後が非常に悪いです。
もし、手術が可能であれば、腫瘍の周りを5~10㎝余分に切除する必要があります。
合わせて化学療法を行う場合、「トセラニブ」という抗がん剤が効果を発揮することがあります。
「トセラニブ」は本来、犬の肥満細胞腫向けに開発された抗がん剤ですが、猫の治療にも効果を発揮することがあります。
〈予防〉
肥満細胞腫には、有効な予防法がありません。
肥満細胞腫は見た目も様ざまで、小さいものもあれば大きいものもあり、柔らかいものもあれば硬いものもあります。
皮膚に「できもの」ができたらすぐに受診をして検査してもらうことが重要です。
肥満細胞腫は虫刺されに似た見た目のものもあるので、見た目だけで判断することは避けましょう。
猫は犬に比べ、もともと体表にはできものが出来にくい生き物です。
何か異常があれば動物病院を受診してください。
〈飼い主ができること〉
飼い主ができることは、普段から飼い猫とスキンシップをしてよく体を触ってあげることです。
ただ、可愛がっているだけでなく、しこりや硬いところはないかを調べる気持ちで触診する習慣が早期発見につながります。
肥満細胞腫の場合は、発症しやすい9歳前後と14歳前後の年齢を覚えておきましょう。
合わせて『猫のガンを知る(注射部位肉腫、口腔内扁平上皮がん)』をご覧ください。
お読みいただきありがとうございました。
