
猫のガンを知ろう!(注射部位肉腫・口腔内扁平上皮がん)
【猫が掛かりやすいガン】
猫の2大疾病の1つが「ガン」です。
猫の病気で腎臓病などの泌尿器系の次に多い病気が「ガン」です。
その「ガン」の中でも今回は「注射部位肉腫」と「口腔内扁平上皮がん」について話していきます。
まずは「猫の2大疾病に注意」をご覧ください。
【猫の注射部位肉腫】
注射部位肉腫とは、主にワクチンなど注射を打った部位を中心に発生する「ガン」です。
〈特徴〉
皮膚や皮下にできる悪性腫瘍で肥満細胞腫に次いで2番目に多いガンです。
再発率が極めて高い。
〈症状〉
皮下に発生する腫瘍。
発生する部位は、肩甲骨間、後ろ足、わき腹、頸背部、体幹など注射を打つ場所ならどこにでもできます。
一般的な症状はワクチン接種後3か月~3年かけて徐々に大きくなるというものです。
肉腫のほとんどは皮膚と筋肉の間に発生します。
注射部位肉腫の発症年齢は8.1歳で、比較的若い猫にも起きてきます。
注射部位肉腫は、肺への転移が多く、太もも以外の場所では手術によって肉腫を完全に取り除くことが難しく、再発率は14~69%です。
潜伏期間は4週間~10年と非常に幅が広く、どの注射が引き金になったのか、獣医師でもわかりません。
〈検査・診断〉
確実に診断するためには、病理組織検査および造影CT検査、MRIが必要です。
その他には、血液検査、尿検査、エックス線検査などがあります。
特に胸部のエックス線撮影は、10~24%の確率で見られるという肺への転移を確認するためにも有効です。
〈治療〉
治療は外科手術が基本で、必要に応じて放射線治療や化学療法を併用します。
手術では、腫瘍周辺をかなり大部分にわたって切除します。
腫瘍を完全に取り切れれば、多くは再発を抑えることができます。
ただ、手術は腫瘍の性質を理解した腫瘍外科専門医が望ましいです。
〈予防〉
不必要なワクチン接種や肩甲骨間のワクチン接種を避ける。
ひとつの部位に接種するワクチンは1種類にし、カルテに接種部位を記載しておくといいです。
肉腫ができたとき切除が難しくなるため、筋肉の中や肩甲骨間への注射はさけたほうがいいです。
注射する部位を足の先や手の先、尻尾などにすることが無難ですが、猫が受け入れてくれるかが問題です。
とにかく、同じ個所にばかり注射しないということが大切です。
とはいえ、発症率は1万匹あたり1~3.6匹と推定されていますから、やたらめったに発症するガンではありません。
〈早期発見のために飼い主が覚えておきたいこと〉
次の3つに当てはまったら、受診して生体検査をしましょう。
1 ワクチンを注射した部位のしこりが3か月以上持続する。
2 しこりの大きさが2㎝以上になる。
3 ワクチン接種後、1か月過ぎてもしこりが大きくなる。
大事なことは、注射をした箇所を飼い主が覚えておくということです。
時間がたつと忘れてしまいますから、メモなどを必ず残すようにするといいでしょう。
【猫の口腔内扁平上皮がん】
口腔内扁平上皮がんは、口のなかに発症する「ガン」です。
〈特徴〉
主に高齢期の猫に発症します。
口の中、歯肉や舌、唇、粘膜などに腫瘍ができる「粘膜型」と、骨にできる「骨浸潤型」があります。
〈症状〉
「粘膜型」は、粘膜がえぐれるように潰瘍ができるのが特徴です。
左右非対称の口内炎や潰瘍があったら、このガンの疑いがあります。
「骨浸潤型」は、口の中はきれいですが、多くの場合下あごが硬く腫れあがります。
口腔内扁平上皮がんの初期は、歯のぐらつきが見られることが多く、進行すると食欲不振となり体重が減少します。
また、患部からの出血や左右非対称の顔の歪みなどが現れます。
高齢でよだれがでたり、口を痛がる素振りを見せたり、食欲が減少するなどが起きてきます。
病状が進行するにつれ潰瘍が大きくなり、出血したり膿がでたり、悪臭がしたりします。
やがて侵された部分の機能障害が現れます。
口腔内扁平上皮がんの発症年齢は、14歳ごろです。
〈治療〉
治療は外科手術が基本です。
しかし、腫瘍を除去しても再発することが多く、放射線治療や化学療法も効きづらいです。
1年生存率は約10%
多くの場合、半年を超えて生存することは難しいです。
まれに分子標的薬の「トセラニブ」が効くことがあります。
〈予防〉
飼い猫の顔の小さな擦り傷がいつまでたっても治らない。
それどころか、だんだん酷くなってきたら口腔内扁平上皮がんを疑ってください。
口腔内扁平上皮がんになる原因ははっきりしていませんが、煙草の煙など身近な環境に含まれる大気汚染物質が要因と考えられています。
〈飼い主ができること〉
飼い猫の前で喫煙しない。
副流煙は猫にとって害以外のなにものでもありません。
可能な限り禁煙することをおススメします。
ガンに限ったことではありませんが、飼い主の普段からの観察と触診が早期発見につながります。
日々、猫の様子を把握して変化に気がついてあげましょう。
お読みいただきありがとうございました。
